AI時代の薬剤師の役割とは|働き方の未来

AIやロボットの活用が進んでいます。薬局のICT化もこれからさらに推進されていきます。今回は、新たなAI時代に薬剤師の仕事はどうなるのかについて考えてみたいと思います。

topic_01_a_ogp.jpg3度目のAIブーム

いまや、AIは、その記事を見かけない日はない位、いろいろな分野で話題になっています。実はAIがブームになったのは今回が初めてではありません。過去、2回、AIは大きく盛り上がりましたが、その都度しぼみ、今回が3度目の正直です。今回の特徴は、ディープラーニングという新しい手法によりAIが自立的に学習を重ね、人間では思いもよらない成果を生み出しているということです。囲碁のAIに、もはや人間が太刀打ちできない状況になったことがそれを象徴しています。但し、AIには、こうした特定の目的のために作られた「特化型AI」と人間の脳のように様々なことをこなすことができる「汎用型AI」があります。これから10年、15年の間に仕事や生活に大きな影響を与えるのは特化型AIだと思われます。人智を超えるようなSFチックな「人工知能」が実現するのはまだまだ先のことでしょう。

10年後になくなる仕事は?

「特化型AI」が仕事に及ぼす影響をセンセーショナルに世間に訴えたのが、5年ほど前に相次いで発表された「AIに仕事が置き換わる」というレポートです。中でも世界に衝撃を与えたのが、英オックスフォード大学のオズボーン准教授が発表した「雇用の未来」で示された「10年後になくなる仕事」でした。これは米国における702の職種を「なくなる確率」でランキングしたものです。失われる確率は1位の99%(確実になくなる)から702位の0%までとなっています。最近話題の自動運転が実現するとタクシーやバスの運転手はなくなる仕事に分類されそうですが、この論文でもなくなる確率は89%となっており、やはりそうかなという感じがします。

薬剤師の役割、日米の違い

では、薬剤師の仕事はどうなるでしょうか。このランキングで薬剤師は649位の1%でした。薬剤師の皆さんはホッと胸をなでおろすところですが、注意しなければならないのは、これは米国における薬剤師のことであるという点です。このランキングを上から順番に見ていくと141位に、なくなる確率92%のファーマシー・テクニシャンという職種が現れます。ご存知の方も多いと思いますが、米国には日本語で言うと調剤技師という専門職がいて薬剤師の管轄下で調剤業務を担っています。米国の薬剤師は、予防接種の実施や医師からの委任によって処方箋を書くことができるなど大きな裁量権をもっており、医療保険の関係で手厚い診療を受けることができない患者さんからは医師の代わりとして大変頼りにされている存在となっています。つまり、米国の薬剤師の仕事はなくなりませんが、日本の薬局の薬剤師が担っている調剤業務は、米国の調剤技師の仕事と同様、かなりの確率でAIやロボットに置き換わっていくことが予想されるということなのです。

topic_01_b.jpg

置き換わる対物業務

おりしも、19年4月2日に厚労省が「調剤業務のあり方について」という通知を出し、薬剤師の監視下で非薬剤師による計数調剤は可能という見解を示しています。実際には、きちんとしたシステム化を行い、すでに非薬剤師による計数調剤を実施しているところもあります。非薬剤師の仕事はやがてAI・ロボットへ、場合によっては一足飛びにそちらへ移行することが考えられます。人手不足の日本では、業務を分析し、コンピュータや機械に任せられるものは任せるというAIシフトが各分野で広がっていきます。医師、薬剤師、看護師といった人の命に関わる仕事は決してなくならないと思います。しかし、従来からも言われているように、薬剤師の業務は対物から対人メインへとシフトするということを、このことからもよく認識しなければならないでしょう。

法改正も業務の変化を後押し

来年、2020年の診療報酬改定では、調剤報酬が主要テーマになると考えられています。調剤業務は機械化などによる業務の効率化が見込まれることを勘案し、調剤料は引き下げ、服薬指導や在宅医療への取り組みを評価して薬学管理料を引き上げることが検討されそうです。また、今国会に提出されている医薬品医療機器法の改正案でも、薬剤師が調剤後も必要に応じて患者さんの服用状況を把握・指導することを義務付けるという薬局の機能強化策が盛り込まれています。

このように、法制度の面でも薬剤師の役割のシフトチェンジは速いスピードで進んでいくことが予想されます。今やっている仕事がなくなるから大変だということではなく、AIやロボットによって生みだされた時間を患者さんに役立つ薬剤師としての仕事にどう振り向け、自らの存在価値を上げていくかを真剣に考える時期に来たのではないでしょうか。