将来【薬局の独立開業】を目指すためにどんな準備が必要?

薬剤師の数は31万人を超える(※)といわれていますが、その内のほとんどは、雇われ薬剤師として働いています。しかし、中には将来的に独立開業を考えている方も多く、近年では独立の動きも活発化しています。その背景にあるのは、診療報酬改定によって大手調剤チェーンに対する調剤基本料の見直しがすすめられ、不採算店舗の個人への譲渡がすすんでいることが挙げられます。大手に所属していれば不採算となる薬局でも、個人が継承すれば調剤基本料の変更により、収益化が可能となるためです。

注目の高まっている独立開業ですが、実際に独立を果たした方からの情報は非常に少ないため、正確に把握している方はそれほど多くないのではないでしょうか。そこでこの記事では、将来開業を考えている方に向けて、メリット・デメリットや将来の独立開業に必要な準備・心構えについて解説していきます。
※平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況より

soudan_16_a_ogp.jpg

薬局独立開業のメリット・デメリット

独立開業には、雇われ薬剤師と比べた際に、さまざまなメリットやデメリットがあります。ここでは、代表的な3つのメリットとデメリットについて、具体例を挙げながらご紹介していきます。

  • メリット①│大幅な年収アップの可能性がある

独立開業によって得られる最大のメリットともいえるのが、大幅な年収アップです。政府の令和元年賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は561.7万円と発表されています。管理薬剤師や薬局長などの役職に就いたとしても、600~800万円程度がボリュームゾーンといわれています。一方で、独立開業した薬局の経営が軌道に乗れば、1,000万円を超える年収を目指すことも決して難しくありません。

  • メリット②│自分の目指す薬局・薬剤師像を実現することができる

会社という組織の中で雇われ薬剤師として働いていると、会社の方針によっては望まない仕事をしなければならない場合もあるのが現実です。加算の取得や会社に提出するための資料作りに追われ、患者さまと接する時間が犠牲になるということもありますね。一方で、独立開業すれば、自分自身で薬局の方針を決定することができるため、理想の薬局を実現しやすいというメリットがあります。

  • メリット③│自分の裁量で働き方を調節できる

雇われ薬剤師として働いていると、会社の決めたシフトや勤務体系の中で働かなくてはなりません。一方で、独立開業すると、稼ぎたいときは休みを減らして働いたり、他に優先したいことがあるときは他に薬剤師を雇ったりと、柔軟な働き方を選択することが可能です。また、自分の薬局を持てば定年が無くなることや、後継者がいる場合には薬局を譲ることができることも、独立開業のメリットの一つです。

  • デメリット①│独立開業にはさまざまなリスクが付き物

soudan_16_b.jpg多くのメリットのある独立開業ですが、さまざまなリスクも付き物です。いきなり数千万円の借金を負わなくてはならないことや、経営が安定するまでの間は赤字を覚悟しなければならないこと、さらには薬価改定や診療報酬改定による利益の減少、調剤過誤による責任、医療機関側の後継者問題など、薬局の経営に関するリスクは数え切れません。

  • デメリット②│労働時間が大幅に延びる可能性がある

自分の裁量で働き方を調節できることが独立開業のメリットの一つですが、経営が安定するまでの間や、急な離職で人手が不足した場合には、労働時間が大幅に延びる可能性もあります。休みの日に急なトラブルで呼び出されることや、申請業務などで役所に行かなくてはならないなどの業務負担によって、プライベートの時間が確保できなくなることにも注意が必要です。

  • デメリット③│働く場所の柔軟性が無くなる

両親の介護によって地元に戻らなくてはならない場合や、子供の進学のために教育環境の充実した地域に引っ越さなくてはならない場合など、ライフサイクルの変化によって住む場所を変更が必要となるケースもありますね。雇われ薬剤師であれば、転勤や転職によって勤務地を変更することができますが、独立開業した場合には、他のエリアに異動することは困難であるため、注意が必要です。

将来の独立開業に必要な準備・心構え

将来的に独立を考えている場合には、しっかりとした事前準備が必要です。ここでは、必要な準備や心構えについて解説していきます。

  • soudan_16_c.jpg必要な資金の貯蓄や人脈の形成を心がける

新規開業であれ事業継承であれ、独立開業には多額の資金を用意しなくてはなりません。銀行や日本政策金融公庫などの融資を活用できる場合もありますが、安定した経営を行うためには、ある程度の貯蓄も必要です。また、独立には多くの人の助けが必要となるため、人脈を広げておくことも重要です。特に、身近で独立開業を果たしている薬局の経営者と接する機会があれば、情報交換をしておくようにしましょう。

  • 調剤スキルだけでなく、経営スキルも身につける

薬局薬剤師に求められる調剤スキルを高めることはもちろんのこと、経理処理や税務処理、労務全般、社会保険、各種規定等についての知識を身につけることも必要です。管理薬剤師やエリアマネージャーなどの役職に積極的に挑戦して、日頃から数値を意識するようにしましょう。研修の充実した大手チェーン調剤や、独立開業支援制度のある薬局へ入職することもおすすめです。

  • コミュニケーション能力を高める

独立開業をすすめる際には、銀行の融資担当者や医薬品卸の担当者、建築業者、経営コンサルタント、税理士など、多くの方と打ち合わせを行わなくてはなりません。開局後も、雇用する薬剤師や医療事務、門前医療機関の医師、ケアマネジャーなど、人と関わる機会は確実に増えるでしょう。折衝力や交渉力などのコミュニケーション能力を高めることも、独立開業の準備としては非常に重要です。


【まとめ】生き残り戦略を定めてアクションを開始、選択肢を増やしましょう

この記事では、将来開業を考えている方に向けて、メリット・デメリットや将来の独立開業に必要な準備・心構えについて解説していきました。雇われ薬剤師として組織の中で働いていると、必要な備品を一つ購入するだけでも、会社にお伺いを立てなくてはなりません。独立開業によって自分の薬局を持つことができれば、理想の薬局や薬剤師像を実現するための近道になるでしょう。

soudan_16_d.jpg診療報酬改定によって大手チェーン調剤の収益が軒並み悪化する中で、大手に就職すれば一生安泰という時代は終わりつつあります。不採算店舗の個人への譲渡がすすむ今だからこそ、独立開業という選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。