【コロナショック】どうなる薬剤師採用(2)

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前年比で医師・薬剤師等の求人倍率が大きく低下

新型コロナ感染症の影響が採用数に現れてきました。4月28日に厚生労働省から発表された3月の有効求人倍率は1.39倍で、前月から0.06ポイント、前年同月からは0.23ポイント低下しました。これは、2016年9月以来、3年半ぶりの低い水準です。有効求人倍率は、ハローワークに登録された求人数を求職者数で割った1人当たりの求人数を示しますが、今回の低下は求人数が前年同月と比べて13.6%も減少していることが原因です。新規の求人は教育・学習支援業を除く全産業で減っており、企業規模別でみると従業員数が100人未満の中小企業で2桁減となっています。

では、薬剤師の求人状況はどうなっているのでしょうか。薬剤師は、専門的・技術的職業の中で医師・薬剤師等として分類・集計されており、3月の有効求人倍率は3.34倍(パート含む)と、全体平均から見ればまだかなり高い状態にはあります。しかし、前年同月からは1.21ポイントも減少しており、全体平均の減少率を大きく上回っています。新規求人数は、前年から1000人以上減っています。

新規採用・派遣案件が減少column_07_c.jpg

通常、薬剤師の雇用に最も大きな影響を与えるのは診療報酬の改定です。前回の改定により全体的に薬局の経営は厳しくなってきており、その影響は昨年からの派遣薬剤師の減少に現れてきていました。今回も4月の診療報酬の改定が採用に及ぼす影響が懸念される中、新型コロナによる打撃がダブルで襲ってきています。

新型コロナにより、薬局の売上は激減しています。日経HRエージェントのヒアリングでは、処方箋枚数が以前の2/3~1/2程度になっているという薬局が多くなっています。この結果、新規の採用を控える動きが、特に個人経営の薬局や中小規模の薬局で拡がっています。また、首都圏では5月、6月で派遣期間が終了する薬剤師に対して次の案件がない状態が発生しています。派遣期間が終了したり、派遣会社そのものが業務をやめてしまったりしたため、派遣から正社員やパートなどの直接雇用に転換したいという薬剤師の相談が増えています。このように、求人数が減少し、求職者数が増加することにより求人倍率が低下傾向を示しています。

薬剤師の8割以上がコロナの影響ありcolumn_07_b.jpg

日経HRエージェントでは、新型コロナの薬剤師への影響を把握するため、登録する薬剤師へのアンケートを実施し、首都圏の調剤薬局・病院に勤務する109人の薬剤師から回答を得ました。その結果、何らかの影響を受けている人が45%、これから影響がでそうだと考える人が38.5%で、合わせて8割以上の薬剤師がコロナによる影響ありと回答しました。その内容は、職場環境、業務量、仕事内容の変化の3つが大きな割合を占めました。

すでに影響があると回答した方の中で最も多かったのが、職場環境の変化でした。感染防止のための様々な措置により職場の環境や仕事の進め方が大きく変化しています。マスクや消毒液の不足が深刻な薬局もありました。また、これから影響がありそうだと答えた薬剤師の中で1番多く挙げられたのが業務量の変化です。前述したように病院外来やクリニックの受診控えから処方箋枚数が減少しており、業務量の減少が懸念されています。経営が厳しくなり、リストラへの不安も発生しているようです。前述した通り、薬剤師の派遣案件は大きく減少しています。仕事内容の変化では、電話対応の増加、クリニック等からのファックス処方への対応があげられました。仕事の変化はコロナのみならず、診療報酬改定の影響も加味されてくることが指摘されていました。

column_07_d.jpgコロナショックで進む医療のIT化

新型コロナウイルスの感染拡大は人々の働き方に大きな影響を与えています。一般企業では、これまでなかなか進まなかった在宅勤務、リモートワークが一気に進み、アフターコロナの世界でもこうした働き方が完全に元に戻ることは考えにくいと思われます。ビデオ会議やオンライン商談など、ファイスtoフェイスが基本だった人と人のコミュニケーションも大きく変わってきています。5Gが浸透していけば、あたかも相手が隣にいるようなリアルと遜色のない世界が体験できる新しい仮想空間技術が普及していくでしょう。コロナによって時計の針が一気に10年進むような感があります。

このような話をすると薬局や病院などリモートワークができない業界は関係ないという方がいるかもしれません。しかし、薬局業界でもコロナ対策により医療ITサービスは徐々に広がっています。代表的な例が「オンライン服薬指導」です。厚生労働省は新型コロナ対策の一環として2月末、慢性疾患の患者に限りオンライン服薬指導を認める通達を出しました。さらに、初診でも医師の診察から薬の購入までを電話で済ませることも可能になりました。規制緩和を受け、これまで国家戦略特区で進めてきた取り組みが拡大しています。クオールやアイン、日本調剤など大手調剤は率先してこれに取り組み、利用者数が大幅に拡大しています。

薬局が医療機関から送られてきた処方箋をもとに調剤し、オンラインで服薬指導を行って患者の自宅へ薬を送付するという仕組みが普及していくと、薬局の在り方は大きく変わってきます。極端なことを言えば、薬局の立地は全く関係なくなり、どの薬局を選択するのかという基準も大きく変わります。これに調剤のロボット化が加わるとどうなるでしょう。薬剤師の働き方もリモートワークが可能となり、ずっとこの人に診てもらいたいという本当の意味での「かかりつけ薬剤師」が誕生してくるかもしれません。これまでわが国では遅々として進まなかった医療のIT革命が、コロナショックで大きく進展する可能性は大きいと思われます。そんな先の話と笑う方もいるかもしれませんが、薬を運ぶドローンが飛び交う未来はすぐそこまで来ているのかもしれません。


株式会社日経HRエージェント
代表取締役社長 小田 正

2020年5月13日