【コロナショック】どうなる薬剤師採用(1) 

column_06_c_ogp.jpg緊急事態宣言が発出されてから本稿執筆時点で2週間が経過しました。先の見えない新型コロナウイルス感染が続く中、当社のクライアントである調剤薬局や病院は医療機関としての責務を果たすべく、リスクを負いながら日々奮闘しています。

こうした中で、今後の薬剤師採用はどうなっていくのでしょうか。10数社の首都圏の薬局経営者、人事担当者に最近の状況を伺いました。

急激な処方箋枚数「減」が薬局を襲い始める

column_06_b.jpg今、ほとんどの薬局に起こっているのが大幅な売り上げ減少です。新型コロナの蔓延により、病院外来やクリニックでの受診控えが増え、これに伴う処方箋枚数が激減しています。いつもは大勢の患者さんが押しかけている筆者のかかりつけ医のクリニックでも、4月に入って受診した際には筆者以外は誰もいないという状況でした。当然、近隣の調剤薬局の処方箋枚数は大きく減少しています。とはいえ休むわけにもいかないのが薬局ですが、中にはこのままの状態が続くと経営がもたないと悲鳴を上げ始めているところもあります。

派遣分野の縮小に拍車

こうした状況から、話を伺った薬局の約7割が今後、薬剤師の採用に影響が出ると答えており、その約半数が採用人数が減ると考えています。処方箋枚数の減少から、正社員・パートについては充足感が高くなってきており、今後の薬局経営が厳しいものになることを予測して新規採用は見合わせるという企業もありました。また景気動向に敏感な派遣の分野では、派遣事業の縮小・撤退や営業所の再編などを行う人材会社が出始めています。首都圏では以前から派遣薬剤師が減少し始めていましたが、コロナショックでさらにその傾向に拍車がかかってきているようです。

採用活動・採用手法に変化の兆し

一方で薬剤師側の動きの変化を指摘する声もありました。求職者側からの辞退や入社延期の相談、パート薬剤師の働く意欲の低下が見られるというものです。その背景にはもちろん感染症のリスクが存在します。病状がよくわからない不特定多数の患者との接触が避けられないことから、小さい子供を持つ薬剤師は大きな不安を抱えています。新店オープンや退職者の補充など一定の採用ニーズは依然としてある中で、今までとは別の意味での採用の難しさが生じてきています。

このような採用数の問題以外に話題となったのは、採用手法の変化です。特に新卒に関してはこれまで行ってきたような合同説明会が難しくなってきておりオンライン説明会が一般化してきています。また面接も一般企業では1次、2次まではWeb面接が当たり前となってきています。中途採用でも、大手ドラッグではWeb面接をスタートさせており、今後この流れはコロナ問題が去った後でも続くものと思われます。リモートワーク同様、良さそうなことは分かっていたが何となく利用を見合わせていたIT化が、コロナショックという強制的なシフトチェンジによってやらざるを得ない状況となり、やってみたら意外とできるじゃないかということが、採用の分野でも数多く生まれてくるでしょう。

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2020年診療報酬改定と重なる「危機」と「チャンス」

今回、新型コロナ感染症の影響以外に4月の診療報酬改定が採用に及ぼす影響についても伺いました。2020年の診療報酬改定によって採用数に影響がある、すでに出ていると答えた薬局は約半数。コロナショックに加えて就職・転職活動にとってはダブルで厳しい状況となっています。とはいえ、改定自体はすでに分かっていたことで、点数の引き上げ・加点や新設も多く見られます。特に対人業務では3つ、オンライン服薬指導では2つの点数が新設され、厚労省の提言に沿った経営戦略を実行しようとしている薬局にとっては、拡大のチャンスととらえている向きもあります。

column_06_a.jpgコロナショックへの対応についても、ピンチをチャンスに転換しようという意気込みの薬局もあります。例えば、自宅近くの薬局で薬をもらう便利さが浸透するかもしれないという意見がありました。前述した筆者のかかりつけ医も「電話診療で処方箋をファックスで送ることもできるので、そういう対応ができる近所の薬局を探しておくとよいですよ」とアドバイスしていました。在宅やかかりつけ薬剤師など地域薬局として住民をしっかり支える体制は、アフターコロナの世界で生き残り、発展する薬局の一つの在り方でしょう。それ以外にも「3周遅れ」と言われるITC化への取り組みも重要です。コロナショックを奇貨としてチャレンジを続けていく薬局に、今後の採用の広がりも期待できそうです。


株式会社日経HRエージェント
代表取締役社長 小田 正

2020年4月21日