派遣薬剤師に変化の動き、進む直接雇用

「派遣時給、3年で3割上げ」という見出しが7月18日付の日本経済新聞・朝刊に載りました。この記事によれば、厚生労働省は「同一労働同一賃金」の制度開始にあわせて、派遣会社に対して勤務年数や能力に応じた賃金支払いを義務付け、正社員との賃金差の縮小を目論んでいます。適用は、改正労働者派遣法が施行される2020年4月からとしています。

この指針について、派遣社員の処遇改善を歓迎する声が上がる一方、識者からは、賃金の上昇による受け入れ企業の負担が重くなり、むしろ雇い止めが増えて派遣社員が減っていくのではないかという意見が出されています。

派遣の減少が始まった首都圏の薬剤師

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実はこの予測を先取りしているのが、首都圏での今の薬剤師派遣の状況ではないでしょうか。最近、日経HRエージェントには派遣から正社員やパート勤務への転換を希望する薬剤師の相談が増えています。今の派遣先での更新が終了したり、希望を満たすような派遣先が無くなってきたりというのがその理由です。当然その裏には薬局側が派遣による人員調達をやめ、正社員やパートに切り替え始めているという状況変化があります。大手ドラッグチェーンの多くは、派遣から新卒の大量採用に転換しており、新規出店のニーズとあいまって新卒者の争奪戦が起こっています。また、中堅どころの調剤薬局では、派遣から正社員やパートなどの中途採用による直接雇用へ切り替える動きが見られるようになってきました。

こうした動きの背景には、派遣料金の高騰があります。以前は超高額な時給単価が派遣会社から提示され、人手が足りない薬局は泣く泣く受け入れるというようなことがありました。地方ではまだまだ薬剤師の人手不足は深刻ですが、ここ数年で都心やその周辺の薬局では以前に比べて薬剤師の充足度は上がってきており、単価もだいぶ落ち着いてきています。

とはいえ、今の水準でも派遣でフルタイムをカバーしたとすると、正社員より高いコストがかかってしまう場合もあります。さらに、本来のテンポラリーなニーズ、例えば遅い時間帯をカバーして欲しいとか産休中を補って欲しいというような薬局側の要望に派遣会社側が十分に応えられていなかったという問題もあります。採用ができるのなら、直接雇用に切り替えようという動きが出ているというわけです。

変わる薬剤師に求められる役割

5月に発表された厚生労働省の薬剤師の受給予測によれば、薬剤師の業務に変化が無い場合、これから数年間需給が均衡し、長期的には薬剤師は余るといわれています。0402通知にある非薬剤師でも可能な業務の明確化による業務シフトやAI・ロボット導入による代替など、業務の効率化の進展を考えればそうした傾向はさらに強まっていくと思われます。

但し、それは薬剤師の仕事内容に変化がなければの話です。今後の薬剤師に求められる仕事はむしろ大きく変わらざるを得ない状況にあります。来年予定される薬機法の改正では、薬剤師に対して必要に応じて薬の服用状況や副作用の確認を義務化することが盛り込まれる方向です。また、かかりつけ薬剤師や在宅への対応など専門性にプラスアルファを必要とされる業務の高度化は必然の流れです。

こうした中で派遣薬剤師は数が減る中、高時給の高度なスペシャリストとなっていくかもしれません。もちろん、今は派遣社員だけでなく、全ての薬剤師が自らの役割について真剣に考える転機にさしかかっているといえるのではないでしょうか。

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